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「For You」は、ラブが独自開発した、端的に言うと「惚れ薬」だ。仕組みは、意中の相手の「少しの好意」を爆発的に増大させ、短期間で本物の恋人関係と変わらぬ感情を抱かせる事が出来る。その効果はホンモノで、それが人伝いに広がり、切羽詰まった女性から多くの支持を得ている。
その結果、ラブは自分のラボを持つ事ができ、生計も保てている。金貨を貯めて、自分専用の大きな暖炉を買う事が、直近の目標だ。認めたくはないが、魔術学校時代の、とあるひとつの失恋の賜物だ。
作りたての「For You」を小瓶に詰め、しっかりと封をする。それを確認した猫はようやく少しの緊張から解き放たれ、盛大に毛をまき散らそうと、作業台の上でごろんと転がり始める。
「土産持ってこないかなー、監査のヒト。ニャー」
「持って来るわけないだろ?気が利かない奴だ、あったとしても、どうせまずいホームクッキーだ」
ラブが、苦虫を噛み潰したような顔で猫を窘めていると、こんこん、と、表玄関のドアをノックする音が聞こえた。ラブは面倒くさそうに螺旋階段を上り、1階へ出るための丸いドアのハンドルに手をかける。それと同時に、猫が階段の一番上で、好奇心に満ちた目でドアが開くのを待つ。
「いいかい?絶対喋るなよ?」
猫はニコリと笑い、こくこく、2回頷いた。
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