1 記憶

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「お前『分離』か?」 「ええ。まあ」  ラブは、まだ止まらない涙を鬱陶しそうに袖で拭い、リュートを睨みつけた。 「ところで今日は、幻覚魔法を自慢しに来たのですか?」 「いや、元々挨拶と説明だけだ。本格的な監査は明日からになる。七日ほど」    チッ、と舌打ちを聞こえるようにしてから「こっちだって忙しいのに」と聞こえないように言ったのをリュートはすべて聞いた。機嫌を悪くさせるために来たわけではないし、気持ちよく監査に協力して欲しい、何より、久しぶりの再会を喜び、充実した七日間を共に過ごしたいという思いがあったため、ご機嫌をとる。 「ラブ、お前に言うなと上司からは口止めされてるが、証拠を見つけるんじゃなくて、無いのを確認するための監査だから」  リュートは、人差し指を立て、自分の口元に当てながらラブに耳打ちをする。それでもなお、ラブは怪訝そうな顔をした。 「あと、これもイエナイコトだけど、何事もなく終われば、迷惑料として少しだが謝礼が出る」 「……この辺り、宿ありませんよ。空き部屋使いますか?」 「マジで?助かる!」  リュートがとっておきの切り札を切り、あからさまに柔らかくなったラブを見て「どうやら少し機嫌を直してくれたようだ」と胸をなでおろした。ラブが、リュートの眼前に、ふっと手を差し伸べる。 「宿代。前金制なので」
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