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嫌な想像が脳裏を掠めた。人が地面に叩き付けられたような。あり得ない話だ。正体を確かめるべく振り返る。
「あ…あぁ……嘘だ…ウソだあぁああぁああぁあぁぁぁああああああぁぁぁ!!!」
後ろには人だったモノがあった。潰れて目も当てられない状態となって地面に転がっている。
ソレは見覚えのある服を着ていた。ソレは特徴的なストラップをつけたスマホを握っていた。
昔、俺が旅行先で買って来た物だ。ブッサイクな猫のストラップ。これはマリにあげた。
服は俺が通っている学校の制服。スカートらしき布が肉塊に引っ付いている。
違う場所を探せば探すほど、確かな証拠が見つかる。見る影もないがコレはマリだ。
「なんで…こんな…嘘だろ……あり得ない…そうだ、夢だ。これは夢なんだ。こんな事があるはずないんだ……」
震える足を引きずりマリに近づく。近づくほどに鉄の様な匂いが鼻をつく。それが夢ではない事を痛感する。
「そうです。これは夢です」
「…へ?」
俺の独り言に返事する声があった。声がした方を向くが涙で前が見えない。
止めどなく溢れる涙を拭い何とか視界を確保する。声の主はマリのすぐそばにいた。
闇に溶け込むような真っ黒な毛を持つ小さな猫。いつの日か学校の前で見た黒猫。
「…く、ろ…?」
「はい」
異世界での俺の相棒だったクロがそこにいた。
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