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 それから二人で夜食を食べた。真夜中だけれど賀川が食べたいというので、結城は具だくさんの鍋を作った。  うまいうまいと賀川が言うたびに、心がジンワリと温かくなる。    本当にここは、さっきまでと同じ世界なのだろうか。  ほんの数時間前までは、寂しくて、不安で、冷たい世界で怯えて泣いていたのに、今はただただ温かな幸福しかない。  賀川がそばにいる、結城を見つめてくれている、それだけで世界は鮮やかに色を変えるのだ。  穏やかな食事の時間を終えると、賀川にせがまれて、結城は顔を赤くしながら、賀川の脚の間にすっぽりとはまるみたいな形で座った。  賀川は背もたれにしているソファの上から携帯を取り、カメラに切り替えると長い腕を伸ばして高くかざす。 「え、なに」 「満腹でご満悦のヒロシくんとシュンくん」 「やだよ」  結城が笑って顔を隠すと、賀川も笑いながら結城の手を外し、素早くシャッターを切った。
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