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昨年の秋に妹が出産したことはもちろん知っていたが、今日、ようやく実家に帰ることができた。姪の咲はもう三ヶ月だ。
さほど遠方という訳でもないのに結城が帰らなかったことを、妹も両親も責めることはなかった。頼子などは、無理をして会いに来てくれて、と逆に礼を言ってくれたほどだ。
頼子だけじゃない。結城の家族はみんな優しい人たちばかりだ。誰も結城の生活について根ほり葉ほり訊くことはないし、干渉することも一切ない。
結城にとってそれはとてもありがたいことだったが、どこか不自然な関係であることも十分に理解していた。皆、結城の前では互いに気を遣い、無難な話題だけが上っ面を滑ってゆく。
きっかけは結城が中学生の頃だ。自らの性的指向について悩んでいた時、結城は男色や衆道を扱った本をまとめて何冊か借りたことがあった。
それらは主に純文学や時代小説といった至極真面目なものではあったが、中には明らかにそれを匂わせる表紙のものや、裏表紙の紹介文に衆道といった文字が入っているものなどもあったため、結城は後ろめたさから、借りた本をクローゼットの中に隠すように置いていた。
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