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「賀川」 「ん」 「来てくれて、ほんとに、ありがとう」 「うん」 「オレ、ここでちゃんと待ってるから。賀川が帰ってくるの、楽しみに待ってる」  賀川は助手席に置いたカバンから、赤い石のついたストラップを取り出した。紐の先には、今住んでいる部屋のものと思われる鍵がついている。 「俺も早くここに、二人の家の鍵をつけられるように頑張るからな」  初めて言葉を交わした日から、互いに大切に持ち続けているストラップ。そこに二人の家の鍵をつけるなんて、それってまるで……。  結城が賀川を見つめると、賀川がさっと目を逸らした。 「あんま恥ずかしいこと言わせんな」  早口に言うのがおかしくて、結城はウインドウ越しに賀川の唇にキスをした。 「ありがとう、峻」  賀川は昼日中のキスと、初めて名前を呼ばれたことに、目を丸くして固まっている。 「この、…びっくり箱!」  結城は声を立てて笑った。それは久しぶりの、心の底からの笑顔だった。
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