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 翌日の夕方、結城は実家を出た。  名残惜しそうにする母たちに、また近いうちに来るよ、と言いながら、結城は深く深呼吸をする。実家から離れてゆくにつれて、呼吸が楽になってゆくような気がした。  あの家に滞在するのはいつも一泊が限度だ。それ以上は持たない。自分のアパートに戻る頃にはいつも、心身ともに激しく消耗していた。  部屋に帰りつくなり、結城はバサリとベッドにうつ伏せに倒れた。自分の指を握った赤ん坊の手の感触を思い出しながら、ぎゅっと目を閉じる。  賀川(かがわ)に会いたいと思った。優しくて、温かくて、絶対に自分を傷つけないあの逞しい腕の中で、存分に甘やかされたいと、強く願う。
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