午後の教室

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 終わると同時に教室内はどっと騒々しくなった。 「んだよー!ムシミ休みかよー!」と笑いながら大声でいうのは木村龍哉だった。いつものように須崎と金井も一緒だった。 「つまんねーよな!」と,須崎が続ける。 「いや,あいつマジキモいから!こなくていいんだけど!」竹内泰子(やすこ)が言う。 「ギャハハハハハ!」その場に集まっていた連中が大声で笑った。  どうして馬鹿は声がでかくて,笑い声もうるさく下品なんだろうと怜は思った。怜は木村が大嫌いだ。  周りの人間は,そのやり取りを聞いているはずだったが,聞いていないふりをしていた。怜も同じだった。暁人もそうだった。  実質,このクラスのスクールカーストの頂点にいたのが木村たちだった。スクールカーストの上層にいる人間には力がある。  力とは,色々な側面を合わせたもので,”影響力”とも言えるようなものだ。コミュニケーションが上手でリーダーシップがあったり,運動が出来てスポーツで活躍できたりすると,クラスメイトに対する影響力が強くなる。  そのような人間は力のある人なので,クラスメイトからの信頼や支持を得やすく,ヒエラルキーの上部へと,周りが自然と押し上げる。  しかし,影響力とは必ずしも好ましいものだけではない。このクラスの木村たちがいい例で,”暴力”もれっきとした影響力になりうるのだ。  暴力は周りを恐怖で支配する。周りの支持は見かけのもので,付き従う者はいわば虎の威を借る狐の状態なのだ。仲間になれば被害には合わないし,スクールカーストの上位だという認識も得られる。  ただのやんちゃ坊主であれば,そこまで影響力は無かっただろう。しかし,木村の悪評は凄まじかった。非行少年と言ってもいいかもしれない。 「木村の家はヤクザだ」とか,「木村の兄は地元の暴走族だ」などと言われていた。  ただの噂話程度であれば,そんなものを簡単に信じるほど怜は馬鹿ではない。しかし,実際に被害に遭った人間を怜は知っていた。隣のクラスの寺山大地だ。
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