幸せはいつも心が決めるもの

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切符と言えば、ひと昔前に幸福ゆきの切符というのが流行ったことがあった。 確か北海道のローカル線に『愛国』と『幸福』駅というのがあり、その区間の乗車券は『愛の国から幸福へのパスポート』だと噂になり、若い女性を中心に当時は何百万枚も売れたという。 爆発的にブームになったのが七十年代だから、それを知っている人間は、その時代に青春を送っていたわけであり、そう考えると、今やいい歳のおっさん、おばさんになっているはずだ。あるいは爺さん婆さんになっているかも知れないが。 かく言う俺も若気のいたりで、ファンシーショップだかで、その切符のキーホルダーを買った憶えがある。今となればどこへ行ったか分からないが… 同窓会でふと、この話題を振ってみたところ、なんともう一人買った奴がいた。それもブームの時ではない。つい最近の話で通販で購入したのだと言うのだ。 (なんと酔狂な…) 大方の心の声はそれだったろう。 その話を聞いたメンバーに、昔の美少女たちがいなかったこともあり、告白したのはそいつだけだった。もちろん俺は隠していたのだ。 今は白髪頭に銀縁眼鏡の気のいいおっさんになっていた男は、絶滅危惧種のロマンチストとして、さんざんに冷やかされた。 元から口下手な奴だったので、いい大人になっても突っ込まれ過ぎると喋れなくなる。 そうこうしているうちに、話題はまた別な男の武勇伝に変わったので、さりげなく奴の隣に座った俺は、こっそり聞いてみた。 「で、お前あの後、何かいいことあった?」 「はは♪実はあの後ね。僕、結婚したんだ」 なんと!聞いてみるもんだ。ちゃんと上手く振れば、こんな特ダネエピソードも聞けるのである。だいたいこいつは今に至るまで、ずっと独身を通していると信じられていた男なのだ。俺はマイクを持った芸能レポーターみたいに興奮していた。
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