第2章 迷いインコの飼い主を探せ

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 藤田のおばあちゃんが独りで暮らす、分譲マンションのエレベーターホール。  妹尾渉は会ってからずっと押し黙ったままだ。  おばあちゃんを挟んで護衛するみたいに左右に分かれて立つ冬と渉。  ダメだ、やっぱ気まずい……。  エレベーターが到着して、降りてきた人が藤田のおばあちゃんを見て驚く。顔見知りみたいだ。 「いったいどうしたの?」 「あはは、ちょっと転んじゃってね」 「危ないなー。気をつけないと」 「ありがとうね、そうするよ」 「お向かいの川西さん。いい人だけど、噂好きでね」    おばあちゃんが片目を瞑ってみせる。解錠しドアを開けると、いつもならカーテンが半分しか開けられていなくて、少し重たい空気が漂っている部屋に、夕日が燦々と差し込んでいる。この部屋ってこんなに明るかったんだ? 冬と渉はたがいに顔を見合わせた。 「さぁ、入ってちょうだい。散らかったままで悪いね。今お茶を入れるから」  玄関を上がってすぐのところにある台所で、おばあちゃんは上機嫌で急須に茶葉を入れ始める。鼻唄まじりだ。  妹尾渉に面倒をみてもらえたのが、そんなに嬉しかったのだろうか。 「何やってんだい、二人とも。突っ立ってないでさぁ入った入った」  おばあちゃんに急かされ、居間に向かって冬と渉が一歩踏み出したときだった。 「ピヨ」  小鳥のひと鳴きが聞こえてきた。
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