第3章 悪い予感

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 有力な情報がないまま、二週間近くが経ったある日のこと。模擬試験だか何だかで忙しかったらしい妹尾渉から、冬の携帯にメールがきた。  藤田のおばあちゃんの依頼を受け、最寄りの警察署に訊きに行ったときは、“逃げたインコを探している飼い主”からの問い合わせはなかった。もしあったら連絡してくれるよう、電話番号を知らせて署を後にした。  数日後、複数の登録スタッフから、拾った動物は警察に引き渡さなければならないのではとの指摘を受けた。  担当してくれた巡査に確かめたところ、本来なら遺失物として署に連れて来てもらうのが原則だが、警察としても世話をする人員を確保しづらいのが現状だ。そちらがよければそのまま一時保護して欲しいということだった。  それを聞いた藤田のおばあちゃんは大喜びだった。 「嬉しいねぇ。もちろん、飼い主が見つかったらいつでも返せるよう、心の準備はしてあるさ。けど、この子のおかげで、この頃毎日が楽しくってねぇ……ねー、ピヨ春♪」 「ぴ、ピヨ春!? ピヨ春って呼んでるの、おばあちゃん!?」 「うちの宿六の名前――義春っていうんだけどね――ひと文字もらったのさ。ピヨ春は本当に優しい子でちゅね~(^^)」  すっかり虜になってしまっているおばあちゃんの様子に、冬は少し複雑な思いを抱いていた。
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