出向く

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乃愛は車の中で下を向いたまま、倒された翼を心配していた。 (翼…大丈夫かな?後で、メールしてみよ…) そして、もう一つ、乃愛には気になることがあった。 そう、執事が言った言葉。 乃愛は、隣に姿勢を伸ばして座る執事を“チラッ”と見て、怯えながら、小さい声で執事に声をかけた。 「あ、あの…少し…お伺いしてもよろしいでしょうか?」 震える両手を胸の辺りで握りしめていた乃愛。 執事はゆっくりと顔だけ乃愛に振り向き、無表情のまま聞いてきた。 「はい、何で御座いましょうか?」 「あの、『奥方様』って、どういう事ですか?私、何も聞いていませんし、同姓同名の人違いでは無いんですか?それに、『旦那様』って?私、まだ16歳になったばかりですよ!?」 「乃愛様の御母様の御名前は、『桐島 渚(きりしま なぎさ)』様に御座いますか?」 「え?あ、はい……桐島は亡くなった母の旧姓ですが、間違いありません…」 「では、人違いでは御座いませんので、ご安心くださいませ」 「いや…あの……」 「私から申し上げることが出来ますのは、渚様のご息女、乃愛様を、庵(いおり)様の元にお連れする事に御座います」 「いおりさま?」 乃愛は不思議そうに執事を見て聞いた。
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