シーソー

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シーソー

 三つになる息子と近所の公園に行った。  小さいし、遊ぶ物もほとんどないけれど、近所の子連れ奥さんはみんなここに集まるので、私も自然とここに来るようになった。 「今日は誰もいないねぇ」  いつもなら、一時を回った今くらいの時間には、たいてい三、四組の親子連れがいるのに、今日は珍しく公園には人がいない。  それでも、来たのだから遊ぶと息子ははしゃぎ、一人で砂場に走り寄った。その姿を見つめながらベンチに腰を下ろす。  のんびりできるのはいいけれど、一緒に遊べるお友達がいないのは息子には残念だろう。多分、一人遊びではすぐに飽きがきてしまうだろうから、今日は帰りに遠回りでもしてみようか。  そんなこと考えていたらスマホの着信が響いた。  目は息子に向けながら電話に出る。でも、常に子供を意識しているつもりでも、話が弾むとつい視線が逸れてしまう。  ふと気づけば、息子の姿が砂場から消えていた。慌てて公園内を見回すとシーソーに座っている。でも安堵したのは一瞬だった。  公園には私達親子以外誰もいない。実際、私の目に映っているのは息子だけだ。それなのに、息子が跨るシーソーが上下しているのだ。  一人で揺らして遊んでいるのかと最初は思った。でも、反対側は無人なのに、息子の身体がシーソーの動きに合わせて宙に浮いたのを見た瞬間、私は悲鳴を上げた。  電話も何もかもか頭から吹っ飛び、私は息子の元へ駆け寄ると、まだ遊ぶとぐずる我が子を抱えて公園を離れた。  ちなみに、この時の電話の相手はよくここで会うママ友だったため、後でかけ直した際に話した理由があっという間に広がり、以降、公園に近づく者はいなくなった。  でも、公園のごく近くに住む人の話では、時々あのシーソーが動いている音がするらしい。  もう近づくことはないと決めているけれど、これからは公園近くを通ることすらやめようと思う。 シーソー…完
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