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7
数日後、真智子は結城を連れて、空手道場に入会手続きをしに出掛けていった。
学校が早めに終わった月曜日だったが、結城は行くときにまた、空手をやることを渋った。
「ゆうくん、テレビも見なければいけないし、お勉強もしなければいけないから、空手はできないよ?」
結城は泣きながら「行きたくな?い」と駄々を捏ねる。
「ゆうくん、強くなるって、ママと約束したでしょう」
毅然とした態度で真智子は言い切った。
(まず、自分が強くならなければ、この子を強くするなんて絶対できない)
懇々と真剣に語りかける母親を見て、結城は仕方なさそうに母と一緒に道場へ向かった。
稽古前の数分間、入会の説明があった。
所定の書類に記載事項を書き、真新しい道着を結城に着せた。
小学校一年生用の0号の道着は、それでも結城には大きすぎて、紙細工の“やっこさん”みたいだった。
それでも新しい道着を着られて、結城は少しご機嫌になった。
大はしゃぎで、真智子の前でパンチやキックの真似を見せたりしていた。
「結城君、では道場の礼儀作法を教えるよ」
師範は結城の帯を締め直して、諭すように話しかけた。
「道場に来たときは、入口で大きな声で、押忍と挨拶をします」
体の大きな師範が優しそうな顔で結城に説明をする。
顔を少し赤らめながら、結城が「はい」と答える。
師範が結城の顔をしっかり見つめて、はっきりと言った。
「押忍だよ」
訳が分からず、結城は目をパチクリさせている。
「すべての挨拶は、押忍と言う!」
師範が大きな声でもう一度、結城に教えた。
「お、押忍」
うつむき加減で恥ずかしそうに、結城は挨拶をした。
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