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10
結城の修行が始まった。
真智子が見ていても、気が弱くて体が小さな結城が皆と同じに稽古をこなすのは、想像していた以上に大変だった。
特に、組手の稽古では幼稚園生にボコボコにされ、いつも泣いて帰っては、真智子に「行きたくなーい」と駄々を捏ねた。
「ママ、ぼく、もう空手を、続けたくなーい」
結城は泣きながら真智子に訴えた。両手で目を擦りながら、同意を求める。
「ゆうくん、痛いのイヤだし……空手の練習、厳しいし……」
「ねえ、ゆうくん。空手を頑張って強くなるって、言ったでしょう? ママ、約束を守れない子なんて大嫌いよ!」
厳しい口調で叱る真智子を見て、結城は不安そうな顔になった。
きっとこの子は(何でママは、ボクのこと、こんなに厳しくするんだろう?)と思っていることだろう。
今までだったら、つい甘やかしてしまっていた。でも、今の自分には、もう余り時間が残されていない。
真智子は自分の心を鬼にする決意をした。他のことならともかく、空手のことだけは絶対に妥協せず、厳しく言い切ろう。
強く決意した心とは裏腹に、真智子の体力は日に日に病魔によって蝕まれていった。
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