第2章

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3  結城に頼まれて、真智子は西葛西駅前のレンタルショップ《ツタヤ》に『仮面ライダー龍騎』のビデオを借りに出掛けていった。  真智子は《ツタヤ》まで自転車に乗っていくだけで、いかに自分が体力を奪われているかを実感した。  学生時代は陸上選手として活躍し、週二回は近所のスポーツクラブでボクササイズを習っていた真智子は体力だけは、自信があった。  それなのに、ペダルが錆び付いたかのように異常に重く、自転車がなかなか前に進まない。病が身を蝕んでいることを、自覚せざるを得なかった。 《ツタヤ》の前に自転車を止めていると、薄汚れた看板が目についた。 「誰でも強くなれる空手 松栄塾 会員募集中」 (こんなところに空手道場があるなんて、全然、知らなかった……)  看板には屈強な男と、少年少女たちが満面の笑みを浮かべている。真智子は「誰でも強くなれる」という文字に気を引かれた。 (あんな結城でも、強くなれるかしら?)  何かに引かれるように、ふらふらっと階段を登り、エレベーターのボタンを押す。  道場は4Fのテナントにあった。  最初、真智子は奥まった道場へは入りづらく、入口の辺りから中を覗いてみた。  
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