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小さな子が、エクササイズ・ボールを使って遊びに耽っている光景が見えた。
(これだったら、結城にもできるかしら)
先生らしき人から号令が飛ぶ。
「はい、かたづけて集合!」
子供たちが慌ててボールやマット代わりに使っていたミットをかたづけた。
すごい統率力で集合を完了する子供たち。三十秒も時間を掛けずに、横一列に整列した子供たちを見て、真智子はある種の感動を覚えた。
(こんな小さな子供たちが、良く躾けられているなぁ)
入口に近づき入会の案内をもらおうと思った。
玄関に入ると同時に稽古が始まった。
先生の与える指示に、幼稚園生のような子供まで大きな声で「押忍!」と返事をしている。
入口に立った真智子に気づき、先生が指示をした。
「たつる」「押忍」
アトピーで顔がブツブツだらけの、黒帯を巻いた少年が走って駆け寄ってきた。
「何か、ご用でしょうか?」
両手をきちんと前に揃え、しっかり真智子の顔を見て訊ねた。
「あのー……入会の案内みたいなもの、ありますか?」
こんな小さな子に言って分かるかなぁと思いながらも、訊いてみた。
「どうぞ、お入りください」
黒帯の子はスリッパを揃えて置きながら、中に入るよう勧めた。
スリッパに履き替え、入ろうとしたときに、
「お母さん。ここは道場なので、靴を揃えてください」
ぴしゃりと言われ、真智子はまた感動した。
「あっ、ごめんなさい」
と即座に謝り、(なんて礼節の行き届いた道場なのだろう)と思いながら靴を揃え入って、すぐの指導員室で入会案内一式を貰った。
帰り際、同じ少年に聞いてみた。
「今、何年生?」
「一年生です」
黒帯を締めた、たつると呼ばれていた少年が答えた。結城と一緒だ。
「ぼくは、どれくらい空手をやっているの?」
「幼稚園の時からです。だから、もうすぐ三年です」
「そう、立派ね」
「いえ、そんなことありません」
直立不動でハキハキと答える黒帯の一年生を見て、真智子は結城にも習わせたいと真剣に思った。
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