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よそ見をすんじゃねぇ・・・。
俺は体育館の床を強く蹴って前に踏み出していた。
ダンッ!! と体育館に響いたその足音は重たかった。
そして、俺は思いっきり雛人の胸ぐらを掴み上げ、拳を構えていた。
けれど、雛人は・・・。
「春海。止せ」
構えていた拳を・・・腕を俺は掴まれた。
そして、そう聞こえた声は静かで低くて威圧的だった。
「・・・要さん」
俺は横目で要さんを捕らえ、肺いっぱいに息を吸い込んだ。
何・・・してんだよ・・・。
要さんの肩越しに見えた咲良のその表情には明らかな怯えが滲んでいた。
最悪だ・・・。
「雛人くんっ!!」
ああ・・・本当に・・・最悪だ・・・。
そう耳を突いた友利先輩のその声に俺は全身の力を奪われた。
全身の力を奪われた俺はその場にへたり込み、力なく項垂れた。
「・・・落ち着けよ」
そう言ったのは要さんだった。
それに俺は何の反応も返すことができなかった。
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