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01
汗が落ちたそばから乾くような7月を迎え、教室の中は、期待と倦怠に満ちていた。今日、中間考査が終了した。
教壇の上では、担任の宮崎先生が諸注意を行っている。ホームルームも終盤である。話を聞く者は誰もいない。窓の外には白い雲と青い空のコントラストが美しい空がある。空調がなければ、そのことに気づくことはかなわず、ただ机に突っ伏して過ごしていたことだろう。文明の利器、さまさまである。
感傷的に見上げてしまうのは、今年の夏が高校生活最後だからである。下校時に買うアイスクリーム、ズボンをたくし上げ、騒ぎながらするプール掃除、夕日をながめる坂の上、ともに汗する合宿、手に手を取り涙する全国大会予選。そんな誰もが憧れる情景をひとつも経験してこなかったぼくにとって、最後の機会となる夏である。
その上、今年は修学旅行がないのである。大阪に決まっていたはずの修学旅行が中止になってしまった。国内旅行だと言うのに大げさだけど、世界情勢の悪化が、こんな田舎の小さな高校の目立たない男子生徒にまで影響するのだ。その実、本校以外の近隣の3校が修学旅行先を海外にしていて、軒並み中止になったあおりを受けただけなのである。
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