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水希が不思議そうに首を傾げておちょくってから、カバンを漁って漫画を引っ張りだす。椅子に深く身を預けて読書を始めた水希は、もう赤司の相手は片手間でしかする気がないと態度で語っていた。
両手で漫画を支えて読み進める水希が思い出したように赤司を見る。幼さの滲む丸みをきつめのメイクで誤魔化した双眸が赤司のパソコンを捉える。
「あ、でも、なんか物書き始めたんですよね。調子はいかがです?」
「さっき書き始めたよ」
「書き写し始めたの間違いでしょ」
即答した赤司にさらに被せて碧羽が答える。
「どうしてこっち見てないのにそんな断言できるんですか」
「どうせ見栄を張って、プロローグも丸写しじゃなくて色を付けようとか思ってたんでしょ」
赤司の悲鳴を、碧羽が変わらない姿勢で返す。ご機嫌なようすでまた頭を振る。彼女の本体が実は、結い上げた髪の方ではないのかという疑いが生じかねないほどに、揺れる髪が彼女の機嫌を表しているようだった。現代文芸部は彼女の執筆活動の場所だけではない。その事実が、水希が来てから犬の尻尾のように振れる髪からもうかがえる。
碧羽に見透かされていることを改めて思い知って、赤司が肩を竦める。
「どれどれ、どんな話をパクるのかな?」
水希が漫画を机に放ると、ずりずりとパイプ椅子を引きずって、にじり寄る。
「パクるって、身もふたもない。あくまで参考、パロディ、オマージュ、二次創作」
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