インバース・パラレル

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「簡単に言うと、この日付がゼロを意味してることがあるの。ゼロはコンピューター上では、ゼロという数字を表すし、何も無い事を示しもするわ。つまり、この投稿には時間が無い可能性だってある。だからこの日付より以前に送られたのかもしれないし、未来からのメッセージかもしれない。あるいは時間という概念が、私達の居る世界とは全く異なる別の場所から紛れ込んだメッセ―ジかもしれないわ」 「妄想も程ほどにしておいてですね、データベースにちゃんと投稿時間が残らなかったってことですよね。こういうのって運営に連絡した方がいいんでしょうか?」  牛歩のような手つきでキーボードを叩いていた赤司が、既に頭から煙でも吹き出しそうな顔で二人を見る。写しているだけでそこまでの顔をするのは向いていないんじゃないか、と水希が笑う。  そんな状態の赤司から、面白みの欠ける答えの最たるものが転がり出て来て、碧羽が冷めた視線を向ける。 「これから物語を書こうっていうのに、夢が無いわね」 「赤ちゃんはもう少し目の前の不思議を楽しんだ方が良いと思うなー。そんなんじゃ立派な作家さんになれないよね」 「別に先輩みたいな立派な作家になりたい訳じゃないから」 「そう言ってくれるのはうれしいけれど、私だって作家じゃないし。私のは下手の横好きって言うの。そういうのは作家とは呼ばないわ」  碧羽が肩を竦める。自分の文才というものを弁えているのだと、その態度が語っていた。     
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