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ただ、春先、この部室の利用許可を得た当日に悲劇は起こった。荷物の搬出時に、体育祭のゲートにつかう大きな張りぼてをソケットにぶつけて壊して以来、この部屋に蛍光灯が灯った事は無い。今でも、本来は水平を向いているはずの天井のソケット部分が赤司達を監視するように下を向いたままだった。
「碧ちゃん。いい加減これ直してもらいません? これからどんどん日が短くなるよ?」
「駄目よ。それがばれて、部室が取り上げられたらどうするの」
「ええ? そんなことで取り上げられちゃうの!?」
水希があげたのは驚愕の声ではない。それは立場の弱さと、その上で部活を維持している碧羽が辞めた後の事を案じた声だった。
「創部にあたって、相当文芸部をこき下ろしたらしいですね。教頭先生が許可くれたらしいですけど、文芸部の顧問の先生にまで言及してかなり怒らせたらしいじゃないですか」
「酷い言い方するのね。あんな騒がしい部活で執筆なんてできないでしょ。あまり強い立場じゃないのは認めるけど、問題を起こさず、ひとまずちゃんと実績を残していれば存続できる訳で……」
「んー、碧ちゃん、これは問題じゃないの?」
文芸部時代を思い出して碧羽が顔を顰めたところに、水希が天井を指さして追い打ちをかける。
「問題だから黙っているし、気づかれないように活動は日が落ちるまでなの。わかったら、さあ! 早く帰るわよ」
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