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彼は英雄だった。
英雄とは、永遠にあるものであり、己が犠牲を厭わぬものである。偉業を成し、万人を救い、億千の喝采を得る。それこそが英雄だ。彼に数多の喝采が送られることはなかったが、だからこそ私が声を上げるのだ。彼という英雄の存在を忘れぬために。
世には目を閉ざした盲目の徒が溢れかえっている。かくいう私もまた、盲目の群れにその身を落とした一人だ。ただ、私は他の者とは違うと確信している。私は己の確固たる意志で目を閉じた。全ては彼の英雄を英雄たらしめるために。
そして、今、再び目を明かすに至ったからこそ、私は語るのだ。
彼こそが、偉大な英雄だと。彼の決断に過ちなど無かったのだと。
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