An artificial flower

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「人間達の目的はボクを兵器にすること。人間達が殺し合うための道具としてボクは存在している。だからボクはとっても強い。本当に、本当に馬鹿らしいよ」 彼女は花畑に囲まれながらそう言った。作られた身体、作られた命。自分に自由は無いのだと彼女は語った。 「ボクはお花とは違う。ボクは生き物らしく子供を作ることさえ出来ない。ボクは人間に作られ、ボクを必要とするのは人間だけなんだ。だからボクの存在価値なんて――」 「いいや」 グランは言った。一度は泣き止んだ彼女はいつの間にかまた泣き出していた。 「お前がどう生まれてどう育ったかなんて関係ない。今お前はここにいる。ここには俺とお前だけだ。人間はいない」 彼女は顔を上げた。 「お前には夢があるんだったな。ならお前の存在価値はそれだ。夢のために生きる。良いじゃないか。それに――」 グランは目を逸らし、赤くなりながら続けた。 「――お前は俺にとって必要なんだ」 アメリアは更にわっと泣き出し、グランに抱きついた。思ったより強い力に呆気なく押し倒され、地面に背中をつく。 「うおっ!」 「グラン……、グラン…………!」 グランの胸で泣きじゃくる。グランはどうしていいか分からずに目を泳がせた。 「だ、大丈夫か?」 しばらく経ち、静かになったので問いかけてみる。彼女は顔を上げた。 「……もう、大丈夫。だってグランがいるから。ほらっ!」 そう言って笑顔になって見せる。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって酷い有様だったので、グランは堪えきれずに吹き出してしまった。 「あっ!グラン、笑った!」 彼女が声を上げる。 「なっ、なんだよ。俺が笑っちゃおかしいか?」 グランは笑いながら返した。 「だってグラン笑ったの初めて見たんだもん!」 「えっ?」 アメリアも笑い始めた。言われてみれば、確かに。グランは笑った事がなかった。いや、正確に言えばずっと昔に笑ったのだろう。しかしそれは遥か過去の事。長い間失われたものだった。 「そうだ、グラン。ボクね、新しい夢が出来たんだ」 アメリアはグランの上からやっと降り、いつもの太陽のような笑顔で言った。 「何だ、教えてくれ」 グランも起き上がり、彼女と目を合わせた。 「世界の面白い物を全部見て、それを全部グランに教える!良い夢でしょ?」 「ああ、最高だ」 グランは再び笑って、いつも通りに青い空を見上げた。
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