0人が本棚に入れています
本棚に追加
アメリアは山羊を素早く食べ終え、口の周りを舌で舐め取った。
「グランさ、いつもどんな所で寝てるの?連れてってくれる?」
「まぁ良いが……。ちょうど今から帰るつもりだったしな」
グランは答え、歩き始めた。アメリアは嬉しそうにグランに着いてきた。
「あっ、さっきの山羊さん美味しかったよ。ありがとう!あの味は下では味わえなかったなぁ!」
彼女は『下』で食した様々な食べ物の話をした。肉をはじめ、魚や植物、『キノコ』と言うらしい謎の物体。それらについての話を途切れること無く続けた。
しかし『下』とは何だろうか。グランたちワイバーンは高い山の上で暮らしている。グランの知る限りは山を降りたワイバーンはいないのだが、アメリアは山の下から来たのだろうか。だとすればただの純真な少女に見える彼女は、意外にも希少な経験をしているのかもしれない。無機物で飾られた体とも関係があるのだろうか。
アメリアはそんな話をグランの住む洞窟に辿り着くまで続けた。肉と魚しか食べた事の無い彼からすれば完全に別世界のようで、グランは彼女の話に度々相槌を打ちながら聞き入った。
「着いたぞ、ここだ。大して広くはないが」
「おぉー!」
彼女は感嘆の声を上げた。謙遜無しに面白みのない洞窟なのだが彼女にとってはそうではないらしい。入口の地面や周りの岩をジロジロと見ている。
「なかなか良いとこだね!ボクは好きだよ、こういうとこ」
アメリアはそう言って断りもなく洞窟の中へ入っていった。グランも彼女を追う。
「うん、やっぱいいね。凄い……落ち着くよ…………」
彼女の声は少しずつ小さくなっていった。しばらくの間絶やさなかった笑顔が少し陰る。
何が彼女をそうさせたのかは分からない。彼女の過去にあるのか、それとも、その異常な身体にあるのか。
「……アメリア」
グランは彼女に語りかけた。
「あんたが良ければ、その……。しばらくここに居てもいい。ほら――いい感じの洞窟が見つかるかもわからんしな」
根拠は無いが、彼女も自分と同じく『孤独』なのだと感じた。
最初のコメントを投稿しよう!