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ただそれだけを繰り返していた。
ーーなんと素晴らしい事か!
オレはこれがやりたかった。
思い返せばレイラに襲撃されて以来、何らかの作業に追われ続けていた。
町の再建を始めたかと思えば、大型兵器と死闘まで繰り広げて、ようやく手に入れたこの『無』の生活。
骨が溶けきるまでこの暮らしを続けていきたい。
オレのにらんだ通り、あの日に差し替えた『叡智の王』はチートスキルだった。
こんな無責任なリーダーを、みんな崇め奉ってくれている。
しかも『3食完寝』付きという厚待遇で。
戦闘スキルよりも、遥かに意義のあるものを選んだと思う。
そんな事をボンヤリと考えていると、小さな咳払いがひとつ。
その音色は若干高く、発信者の体格を匂わせる。
それから一呼吸置いた後に、視界の外から声が聞こえてきた。
「陛下、少々よろしいでしょうか」
寝所のドア付近に控えながら、明瞭な言葉で話しかけるヤツがいた。
声の主は見た目が20代前半で、赤い髪をアップにまとめている。
手足はスラッと長く長身で、並んで立ったならオレと大差ない目線になる。
名を「イリア」という魔人の女は、オレ専属のメイドを自称している。
その言葉に偽りが無いのか、四六時中側そばに居る始末。
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