第1話  寝所スタート 

2/5
前へ
/178ページ
次へ
ただそれだけを繰り返していた。 ーーなんと素晴らしい事か! オレはこれがやりたかった。 思い返せばレイラに襲撃されて以来、何らかの作業に追われ続けていた。 町の再建を始めたかと思えば、大型兵器と死闘まで繰り広げて、ようやく手に入れたこの『無』の生活。 骨が溶けきるまでこの暮らしを続けていきたい。 オレのにらんだ通り、あの日に差し替えた『叡智の王』はチートスキルだった。 こんな無責任なリーダーを、みんな崇め奉ってくれている。 しかも『3食完寝』付きという厚待遇で。 戦闘スキルよりも、遥かに意義のあるものを選んだと思う。 そんな事をボンヤリと考えていると、小さな咳払いがひとつ。 その音色は若干高く、発信者の体格を匂わせる。 それから一呼吸置いた後に、視界の外から声が聞こえてきた。 「陛下、少々よろしいでしょうか」 寝所のドア付近に控えながら、明瞭な言葉で話しかけるヤツがいた。 声の主は見た目が20代前半で、赤い髪をアップにまとめている。 手足はスラッと長く長身で、並んで立ったならオレと大差ない目線になる。 名を「イリア」という魔人の女は、オレ専属のメイドを自称している。 その言葉に偽りが無いのか、四六時中側そばに居る始末。     
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1092人が本棚に入れています
本棚に追加