第1話  寝所スタート 

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どんな時も柔和な笑顔を絶やさないのだが、状況次第ではゾッとさせられる。 オレは視線すらそちらには向けず、先程の言葉に返答した。 「なんだ。いい加減働け、とでも言うつもりか?」 「滅相もございません。今日はいくらか肌寒うございますが」 「それほど気にならない。だが、言われてみればそうかもしれん」 「私を抱き締めて暖を取られてはいかがでしょうか。このような日には人肌が心地よい、と耳にしております」 「そうか。口閉じてろ」 「承知いたしました」 イリアは平常運転だ。 真面目を装いつつ、逆セクハラ紛いの発言をする。 傍目から見ると優秀なだけに性質(たち)が悪い。 改めて意識を窓の外へ向けた。 カァン、カァンと槌(つい)を振るう音が聞こえてくる。 きっと真面目に作業していることだろう。 近くに尊大な怠け者が居ると知りつつも。 ーーすまんな、オレは働く事が苦手なんだ。 顔の見えない勤勉家に小さく謝罪した。 きっとそれが届くことはないだろうが。 コンコンッ。 ノック音が聞こえた。 どうやら誰か来たようである。 イリアが静かに相手を迎え入れた。 訪れた客は無遠慮にツカツカとこちらに歩き、オレの目線の先で仁王立ちになった。 妙に小柄で華奢な女だ。     
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