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奏太の呼びかけに二人の距離の近さが垣間見えて、ちりちりと胸が痛む。俺の知らない時間がこの二人の間にあることは間違いないのだ。
「いや、秘書はもう懲りたよ」
奏太に向けられた優しい笑顔に絆が見える。ここで、部外者は俺だと暗に言われているような気がして居たたまれなくなる。
「本当にごめんなさい、全て俺のせいだ……」
「いやいや、私が甘かったんだよ。お前の存在をまさか強請りの種に使われるとは思わなかった。まあ、裏切るような男を雇っていたのは自分の責任だ。ところで、そちらの魅力的な男性は誰なのかな?紹介はしてもらえないのか」
「あ、申し訳ありません、自己紹介が遅れました。私、木村瑞樹と申します。尾上さんとは高校の同級生です」
「同級生……なるほど、権藤明正です」
「はい、存じ上げております。一度お会いしていますよね。このホテルで五年ほど前ですが」
「ほう?で、その同級生がなぜこんなところへ」
「明正さん、そのくらいにしてください。もうご存知なのでしょう、なぜ彼がここにいるのか」
「つい、焼きもちを妬いてしまったかな。そうか、彼がそうか」
「ええ、大切な人です。瑞樹、こちらは権藤明正さん……どう言えば良いのかな。つまり、俺が……十七歳の時から世話になっている」
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