告白

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告白

 「瑞樹、久しぶり。体調はもういいの?」  奏多は俺が左手に掴んだままのビールに視線を移すと、笑いながら言った。  「早退したって聞いたから。お見舞いに来たんだけれど」  「あ……え、なんで?」  驚いて声が掠れる。  「今日、社食で俺のこと見て逃げるんだもん」  確かに食堂で奏太を見かけて逃げるように立ち去った時に、奏太は俺に気がついていたんだと知った。大野が大きな声で俺を呼び止めたからなのか。逃げたつもりはない…いや、確かにあの時は逃げたのかもしれない。  「入社から、偶然の再会ってドラマチックなこと期待してたけど、なかなか会えなくてさ。さすがに部署も知らなかったしね。調べるより、偶然出会えるの待っていたんだ」  「偶然って、お前。あそこで何人働いていると思ってるんだ」  「知ってるよ。でも俺と瑞樹は運命でしょう、実際会えたでしょう。まあ、やっと会えたと思ったら、瑞樹が逃げ出しちゃったけれどね」  「……」  奏太が何を言っているのか理解できない、再会を期待していたのか?それは何を意味するのだろう。     
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