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「今までの四年間は無しということで、お願いします」と、言われても。反応に困る。奏太は充実した時間を過ごしたことは、今の奏太を見て間違いないと思う。
俺の苦しかった時間、悩んだ時間、そして立ち直るまでの時間は何だったのだろう。
「何の連絡も今までなくて、いきなり……」
「連絡しようと何度も思ったよ。でも、連絡してしまえば会いたくなる」
「だったら会いに来てくれれば良かったんだ。俺が、どんな気持ちであの時送り出したのか。今までナシのつぶて、なのにいきなり現れて。俺には理解できない」
「瑞樹、俺は俺自身と瑞樹のために。」
「俺のため?俺の気持ちの何がわかるの?悪い、帰ってくれないか」
奏太に対して言いようのない怒りが沸いてくる。きっと別れることが奏太のためだと本気で思った、だから身を引いた。
それからは、他に何も考えないように仕事だけを考えて生きてきた。最初の一年はひどかった。ふとした時間に奏太がそばにいるような気がして振りかえってしまう。
少しでも追ってくる影から逃げたくてアパートを引越した。だけど、携帯の番号を変えることさえ出来なかった。万一、奏太が俺を必要としたらと、ありもしない妄想にとりつかれていたのかもしれない。
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