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ようやく二年かけて諦めた。もう心は誰にも渡さないと決めた。母親の持ってきたお見合いを初めて受けたのもその年だった。
誰でも良かった、断るつもりはなかった。そのはずなのに、どうしても無理だった。
それからの二年間はただ仕事に忙殺されていただけで、正直なにが変わったのかと言われてもわからない。ただあの時より四年分だけ歳をとって、そしてもう奏太との思い出にも決別してしまっただけだ。
「奏太、俺に……今、もうその気持ちが残ってない。せめて二年前なら、いやいつでも無理だったかもしれない。」
「うーん、俺、振られるのか。期待もしてたけれど、覚悟もしてたんだよね」
奏太はガシガシと頭をかくと、笑って「じゃあ」と、ドアに向かう。靴を履くと振り返って俺の目をまっすぐに見て言う。
「瑞樹、一つだけ聞かせて。今、恋人はいる?」
その瞬間、口から出た言葉に自分でも驚いた。
「ああ」
「幸せ?」
「ああ」
「そうか、じゃあ俺、あの時の判断は間違えてないよ。残念、二年前まではフリーだったのか。あ、ここに俺が来るのもまずいよね。相手は……いや、いいや。帰るね。お邪魔しました」
奏太は嵐のように訪れて、爆弾を落として帰っていった。左手にはもうぬるくなり始めたビールの缶がまだ握りしめられたままだった。
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