幻と現実

2/5
前へ
/110ページ
次へ
 翌日、硬いベッドで身体を起こすと、なぜか母親が迎えに来ていた。  警察から呼び出されるなんてと、泣きながら怒る母親に怒鳴られた。そして、一体何があったのかと詰め寄られた。  疲れがたまっていたところに深酒しただけだと、言い訳しても納得はしてもらえるはずもなく。二日酔いでガンガンする頭はまともな言い訳をはじき出してくれるはずもなかった。結局、黙って母親の話に頷くことしかできなかった。  そして、その日はアパートまでついて来た母親に一日中小言を言われる羽目になった。  冷蔵庫を開けて、呆れた声を出された。部屋を見渡して、あまりにも殺風景だと。恋人もいないのか、と長い説教とも愚痴ともとれる話が続く。  「今度の日曜日、必ず帰ってきなさい」  それだけ言い残すと、ようやく母親は俺を開放してくれたようだ。ただ、空っぽの胃袋に作ってもらったお粥が優しかった。日曜日には帰るかと、スケジュールを確認してなんとかなりそうだと考えた。  土曜日を半分ベッドで過ごして、体は立ち直ったが心は立ち直るまでにはまだ時間がかかりそうだ。自分で、断っておきながらなぜか気分が萎えてしまっている。     
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

135人が本棚に入れています
本棚に追加