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「別に大したことじゃないよ、普段のお前の仕事量の多さを改めて知ったよ。少しは俺たちにも仕事回してくれよ」
「いや、本当に悪かった。助かったよ」
「そういや、お前あの尾上の友達なんだって。」
奏太の名前を出されて、胃がギュッと誰かに掴まれたような気がした。吐き気が上がってくる。
「いや。知り合いって言っても、高校の時に同じクラスにいたってだけだし……」
そう言いながら、確かに高校の二年半を一緒に過ごしただけ。恋人だった期間はそのうちの1年と少しだけだった。そして、その当時の関係に未だに振り回されている自分自身が嫌になった。
前に一歩も進めていないのか、俺。
このままじゃ、だめだ。奏太に会社で偶然会うことはほとんどない。高層階にも社食にも行かない。
帰宅時間も営業と管理部門では全く違う。会うはずはない、そう……朝の通勤時間を除いては。
「おはよう、瑞樹」
会社の入口で、後ろからいきなり声をかけられた。
「え、そう……尾上、おはよう」
「ああ、噂をすれば影が差すってか。おはよう尾上君」
「あ、この前はありがとうございました。大野さんでしたよね。瑞樹、いえ、木村さんと仲がいいんですね」
「そりゃ、俺たち同期で親友だよな」
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