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間に合わなかった……どうすればよかったのかと、ぐるぐると仕方のないことで随分と悩んだ。
偶然の再会で、やっと腕の中に囲い込んだ。そう、取り戻したはずだった。でも、小鳥は腕の中で傷ついた翼を癒して、また飛んでいなくなってしまった。
あの日、全てを失ったと思った。もう二度と立ち直れない。そう思ったのに……気がついたらの心の片隅にその思い出を閉じ込めて、その思い出の入った箱に鍵をかけてしまったようだ。
時間とともに永遠と思った愛も風化して行くのだと知った。
会社で仕事に忙殺されるのは心地よかった。感情に押しつぶされなくてすむ。俺は、忙しいのを解っていて自ら本社への出向を希望した。
本社の出向先の主な仕事は、政府のODA資金を元とする途上国へのインフラ整備だ。
対象国が主にアジアだったので取引先とは二時間程度の時差があった。
その時差のせいで、帰宅が定時になることはなかった。誰も待つ人もいなければ恋人もいない俺にとっては帰れないその状況が、都合が良かった。
実際は子会社からの出向なので、籍は子会社にあるが仕事は本社で行う。
仕事の内容は、本社採用の社員と何ら変わりはない。名刺に印刷されているのは本社の社名だし、デスクも本社採用の社員の隣だ。
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