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一見すると全く同じ会社に同じように勤めているように見える。しかし、そこには大きな違いがある。一番違うのは給与。
それでも大きなビルの中で、一日仕事とだけ向き合えるこの状況がとても心地良かった。
「木村、今日は昼どうする?たまには社食に行くか?」
そう声をかけられて、腕時計に目を落とすと既に十二時を回っていた。
「そうするか、昨日課長に言われたインボイスまだ全部ドラフトあげてないから外に出る時間はないな」
他に金を使うこともない。昼くらいと、近くのビルの地下にある食堂街に出向くことがほとんどだが、今日はもう時間がない。
「んじゃ、そういうことで」
同じ年齢の大野はK大卒で親は弁護士というエリート。地方の国立大出身で子会社からの出向社員という俺とは立場が違う。こうやって二人並んでいても、つい卑屈になってしまう。
「なあ、外為に今年入った新入社員知ってるか」
いきなりの質問に少し頭を傾げる。
「さあ?そもそも本社勤務の人間だって数千人だし、新入社員も今年は百人を超えているだろ。外為に入った新人なんて知っているわけないだろう」
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