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デスクに戻ると席につき、両手で顔を覆うと自分の呼吸を捕まえて落ち着かせようとする。心臓が今まで走ったことのない速度で走り出す、呼吸が苦しくなって肩で息をする。
幻じゃない、奏太だ。どうしてここにいる?
……海外帰り?
何のことだ?紛れもなくあれは、四年前に俺の下から飛び立っていった奏太以外の何者でもない。
お偉いさんの遠縁、留学……どれも奏太には結びつかない。動くことさえできずに、とりあえず落ち着こうと何度も深呼吸を繰り返す。
「木村、どうした?真っ青になって出て行くからさ、驚いたよ。お前、大丈夫か?」
後を追ってきたのか、大野が心配そうに声をかけてきた。
「悪い、大野。飯はどうした?」
「いや、心配でさ、戻ってきちゃったよ。下のコンビニで何かかってくるけど、何か買ってくるよ」
「何もいらない、悪いな心配かけて。少し目眩がしただけだから」
「働き過ぎなんだよ、木村は。少し手を抜いてくれないと、俺たちが使えないってまた言われちまう。今日は早く帰れよ。昨日の接待って丸山商事の菅さんだろ?あの人に付き合ったら飲みすぎるよ」
「ああ、多分そうだな。今日はインボイスあげたら帰らせてもらうわ」
「だな、少しは休め」
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