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欠艦品
誰も居ない海岸の堤防に座って海を眺めていると、誰かが堤防の上を歩いて近付いて来る。
「ねえ、君は髪を切った方が似合うと思うけど」
隣に立ち止まるなり突然そう言った女性は、俺の髪を?き上げて正面から顔を見下ろす。
「何だあんたは、誰か知らないが構わないでくれ。唯一の安らぎの時間を邪魔するな」
手を振り払って突き放すが、その方が絶対似合うと思うんだけとなー等と呟いて立ち去ろうとしない。
立ち上がって帰ろうとすると、同じ学園の制服を着た女子生徒に阻まれる。
「君は男子生徒の制服を着ているのに女の子みたいに綺麗なんだね」
「邪魔だ退け」
「僕はティエオラ、君と同じ……」
「黙れ」
女子生徒を退かそうと肩に手を当てると、簡単に海に落ちてしまう。
それが俺とあいつの出会いだった。
§
「貴様らはこの学園では最も力の無い駆逐艦クラス、言わば軍艦の中でも最弱の量産可能な捨駒同然。いや、これでは駆逐艦に失礼だな。せいぜい手漕ぎのボートの不良品位だろう」
教卓に手を付いて入学早々罵声を発した女は、ホワイトボードに字を書いてこちらに振り返る。
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