立つ鳥跡を濁さず

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そして二日後。 二泊三日の入院で、初めての抗がん剤投与を受ける為、私は病院のベッドの上にいた。 少しでも気を遣う事が減るようにと、お母さんが手配をしてくれた個室。 落ち着かない気持ちをどうにか紛らわせたくて、私はスマホを手に取ると、LINEを開いた。 メニュー欄のともだちをタップして、スクロール。 蓮希のアイコンを見つけ、そこで手を止めた。 旅行の帰り際、蓮希とLINEを交換したものの、通話はもちろんトークさえ、一度もした事はない。 現実逃避は、もう終わり。 楽しい蓮希の夏休みに、これ以上水を差すような事はしたくない。 お互いこのまま離れていく事を、私だけでなく蓮希も望んでいる様な……そんな気がした。
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