溺れる者は藁をもつかむ

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東京駅十二時発、踊り子115号。 指定席の通路側に座り、私は浮かない顔を窓側に座る少年へと向けた。 そんな私とは対照的に、少年は目をキラキラと輝かせ、物珍しそうに車窓から流れる景色を眺めている。 カレンダーがもうすぐ八月に変わる夏空は、雲ひとつないスカイブルー。 その青と少年の横顔が眩しくて、私は思わず目を伏せた。 「気分悪い?」 振り向いた少年が、心配そうに私の顔を覗き込む。 私は少年の顔を見る事もなく首を横に振り、横顔のまま力ない笑みを浮かべた。 「それならいいけど」 少年はほっとしたように言って、また視線を車窓へと向ける。 座席の背もたれに体を預け、伝わる電車の振動を感じながら、私は今更の後悔をしていた。
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