立つ鳥跡を濁さず

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抗がん剤にも様々な種類や投与法があると言う。 私の場合は三週間毎に一回投与する計算で四回ずつ、二種類の抗がん剤を投与するのが望ましい(合計八回)と言われた。 ただ、抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞までも破壊してしまう為、耐え難い副作用が体を襲う。 また抗がん剤は万人に効くわけではなく、数値化すると三割は投与した抗がん剤が効かない事もあるという説明も受けた。 その場合、自分に合う抗がん剤を探す事になるのだが、効くのか効かないのかは、打ってみなければわからない。 早い話が、もし自分に投与された抗がん剤が効かなければ、ただ辛い副作用に襲われるだけという事になる。 ドラマや映画の中でしか知る事のなかった抗がん剤。 嘔吐や脱毛というイメージが強く浮かんで、その事が更に私の恐怖を駆り立てた。 それでも今の私は、それを受け入れるしか術がない。 受け入れなければ、温存手術への道はここで断たれてしまうどころか、死へと近付く事にもなる。 お母さんの震える手が、躊躇う私の手を強く握って……。 私は先生から提案された治療を受ける事に同意した。
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