立つ鳥跡を濁さず

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抗がん剤の投与は、翌日の十三時から病室で行われた。 抗がん剤投与の前に、吐き気止めの薬や生理食塩水を点滴で投与する。 その後、身長と体重から割り出した体表面積によって決められた量の抗がん剤が、慎重に投与された。 投与開始直後のアレルギー反応はなく、第一段階はクリア。 そこから数時間ほどかかって、一度目の投与を終えた。 どことなく倦怠感はあるものの、体調に大きな変化はない。 ほっとしながら、退院したのも束の間、日を追うごとに想像していた以上の副作用が私の体を襲った。 吐き気、嘔吐、便秘、下痢、味覚障害、筋肉痛、口内炎、関節痛、発熱、そして脱毛。 抜けるのは何も髪の毛だけじゃない。 眉毛、睫毛をはじめ、体中の毛が抜けていく。 それから爪の変形や変色も……。 生き地獄という言葉があるけれど、ありとあらゆる副作用に襲われた私は、まさにそのものだった。
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