第一章 自我と欲望

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「その人間に教えを乞うてる小春は何なんだよ」   これはスプーンをくわえながら、 少し頬を膨らませた。 深いそうに目を細める。 「だいたい私が本気になれば、すぐに合格点取れるようになるって」 「そうゆう、これから本気出す、で啖呵を切っているやつらが直前まで勉強せずに毎年落ちてるからこういう制度があるんだろう?」 「私とそんなバカな先輩たちを一緒にしないで」 「 落ちて行った先輩たちも、みんな同じようなことを言っていただろうよ」 「そんなこと言って、 結局はわたりんは、私たちを密室に連れ込んで、無理やりさせてニヤニヤしたいだけでしょ? 固くしちゃってさ」 「今の発言は、頭が固くて融通の利かない僕が、小春と紫藤さんに無理やり勉強をさせるってことで良いのでしょう?」   小春や紫藤さんが夏の暑い時に際どい服を着て、うんうん唸っていたら、もうひとつの頭のほうも固くなるかもしれないけどさ。もちろん、こんなことは言わないし言えない。  空になった皿にカランと銀色のスプーンを置いて、「私は」と、しばらく沈黙を守っていた紫藤さんが口を開いた。 「私は、猿さんが頑張れっていうのなら、頑張ります」     
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