第一章 自我と欲望

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  翌日の個人指導塾でのアルバイトの後、僕はバイト仲間の鈴森凜とクレアモールの餃子屋に入った。医学生の僕は明日の日曜日は休みだし、どうやら高校教師の鈴森も明日は休みみたいだから、口臭は気にしなくて良いから、たまには。 「次の模擬試験っていつなの?」 「夏休みに入る前」 「近いね、間に合いそうなの?」 「それは何を持って間に合っているとするかによる」 「国家試験合格のボーダーラインを超えること、だったら?」 「まず無理だね」 「そんなにひどい状態なんだ」 「まあだけど、次の次にボーダーラインに乗るくらいなところまでは持っていけると思う」 「その子たちは、やればできる子たちなんだね」 「鈴森先生、やればできるってどうゆうこに言う言葉何ですか?」 「うーん、 今は立ち止まっているけれど、いつかきっと輝けるようになる子たちのことかな?」 「オブラートに包まなくたって大丈夫ですよ、先生。今は特に誰にも褒めることがない子たちのことでしょう?」 「そんな風に言うことはないんじゃない?」     
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