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紫藤さんは、 転んだ子供を慰めるような慈愛に満ちた表情で、優しくつぶやいた。
「貧相なのお前の胸だろ」
「ちょっと、わたりん、それはセクハラ。それと貧相なのは、わたりんの想像力も」
「小坂さん、「も」って何ですか?」
笑顔の詰問する紫藤に笑顔を返して、小春は僕の顔を見上げてきた。僕を糾弾しつつ、喧嘩を始めるとは、器用な二人だよ。
「で、どうしてわたりんは私たちの点数を知ってるの?」
「僕が君ら二人の面倒を押しつけられたからだよ」
「えぇ? 最悪ぅ」
「それは、こっちのセリフだし、泣きたいのもこっち」
「わたりんは良いじゃん。私たちみたいなかわいい女の子を教えられて。わたりんはこれまでにこんなにいいことなかったんじゃない?」
「あったわ。人の人生ナメるな」
僕の反論を完全に無視して、小春は続ける。
「それに引き換え私は。放課後の時間を奪われるわ、無理やり勉強させられるわ、一緒にいるのはわたりんだわで。ね? 死にたくなるでしょう?」
「24時間自分と一緒にいて勉強もしている僕は、もうとっくに死んでいておかしくないよな」
「それはわたりんが、自分自身に絶望しているからじゃない? 少しでも希望があったら耐えられないって、わたりんのスペックは」
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