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「ッ、海賊なんか出て行け!この島に取るものなんて何もない!」
「嘘つくなよ。この島には宝があんだろォ?その大事な宝は、大海賊" アビス デビル "様が、ぜーんぶ奪ってやるから安心しろよガキ」
「ついでに、皆殺しにしろってのが船長の命令でなァ。さっさと死んでくれや、クソガキ」
ニヤニヤと笑いながら、目の前の海賊が一歩、また一歩と近づいてくる。
俺も一歩下がったが、後ろを見てすぐに足を止める。
ここは海岸沿いの岩場。後ろは海だ。
逃げられない。
くそ、早く母さんと弟のところに行かないと、他の海賊が来ているかもしれない…!
「ギャハハ!そのクソ生意気な目は嫌いじゃねェが、無力なテメェになにができる」
「うるさい!どけ!」
「戻っても誰1人と生きちゃいねェぜ。この島の奴らはみーんな俺達が殺したからなァ」
「……ッ、どけぇえ!」
挑発するように言う海賊に、頭に血が昇った俺は籠に入っていた魚を投げ、駆け出す。
投げた2匹の魚のうち1匹が銃を持った男の顔に命中し、体勢を崩す。
その時にパンッと銃が放たれたが、俺には当たらなかった。
「このクソガキィ!」
次にもう1人の男が俺にカトラスを振り下ろしたが、それは咄嗟に籠で庇う。
真っ二つになってしまった籠はそのまま離し、その一瞬できた隙を見て2人の間を通ろうとしたが、今度は銃を持っていた奴に左腕を掴まれてしまった。
そのまま強い力で後方に引き戻されたとほぼ同時に、カトラスを持った男の鋭い蹴りが俺の腹に命中した。
「ぐっ!?」
勢いよく後方へと蹴り飛ばされ、地面を何度も転がる。
そして、―――そのまま岩場をも越えた。
「……――あ」
感じた浮遊感。ひやりと背筋をかけのぼる恐怖。
遠くなる岩場に掴まろうと手を伸ばしたが、その手は空を切る。
ああ、届かない。諦めにも似た境地でそんなことを思った。
海に落ちる瞬間、目の前に広がったのは―――雲一つない澄みきった青空だった。
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