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「優秀すぎる航海士を持てて俺は嬉しいよ。正解だ」
「やったー!じゃあ、ご褒美もらっていいかな?いいよね!」
「え?ご褒美!?聞いてねぇけど!」
わーい、と両手をあげて喜び、そのまま立ち上がったタカハル。
そのまま奥へと行くと、棚を勝手に漁り始めた。
棚にはいろんな場所で手に入れた戦利品が保管されている。
大きすぎる物は倉庫の中にあるのだが、宝石や高価な酒、珍しい雑貨や布など、取引に使えそうな物を保管していた。
俺自身はそこまで魅力的に思えない物ばかりなので、欲しいのならあげてもいい。
「これ!」
にっという笑顔と共にタカハルが棚から取り出したのは、赤ワインだった。
しかも、これは同盟相手である「カザミ」という男からもらったものだ。
あの男はお酒の選ぶセンスはある。ハズレは必ずない。
「船長、一緒に飲もうよ!今日の勝利にかんぱーい!」
「ああ、乾杯」
タカハルがコルクを開け、2つのグラスに濃い赤紫色のワインが注がれる。
部屋にあるランプにかざすと、グラス越しに透き通った色がとても綺麗に思えた。
匂いを楽しみ、ワインを1口飲む。
芳醇な葡萄の香りと共に、繊細で深みのある落ち着いた味わい。
あまり酒はわからないのだが、素直に美味しいと思えるものだった。
「これは美味しいな!」
「サク、やっと笑顔になったねぇ」
その言葉に瞠目してタカハルを見ると、俺と視線を合わせて笑みを深め、再度お酒を口に含む。
どうやら、俺は心配をかけてしまっていたようだ。
そういえば、タカハルと会話を続けていくうちに自然と肩の力が抜けているのを感じていた。
いろいろと俺を気遣ってくれていたのだろう。そう考えたら、素直な感謝の言葉が零れた。
「ありがとう、タカハル。これからもよろしく」
「いえいえ。どういたしまして!よろしくね、船長!」
今だけは、その笑顔に救われたような気がしたのだ。
第1話 了
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