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# 男は屋上に立っていた。 本来なら男に入る資格のない場所だったが、そんなことは彼には関係がなかった。 スマートフォンを掲げる。 退屈そうにそれをスライドする。 目に付いたアプリを起動した。 流れる光。 あっという間もないほどの短い時間だった。 どこかで爆発音がした。 恐らくこの都市のビルのどこかに仕掛けた爆弾が爆発したのだろう。 別にテロをやろうとしているわけではなかった。 ただ、暇なのだ。 絶望的に、退屈。 退屈を持て余した人間はそのエネルギーを様々なことに向ける。 正義の側によりかかるのが探偵で。 悪の側によりかかるのが彼のような男だった。 地上では赤いライトがちらいついた。 視界の端に制服を身につけた集団の姿が見える。 恐らく監視カメラで不法侵入者がいることに気がつかれたのだろう。 気の乗らなさそうな顔をした数人がロビーに入っていくのが見えた。 男は首を振った。 屋上の縁に腰かける。 手すりもなにもない。 下にあるのは固い地面だけだ。 彼はスマートフォンを太陽にかざすように上に向けた。 目を細め、唇を吹きながらスライドする。 お目当てのアプリが見つかったところで、気のない様子でぽちっとタップした。
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