1

4/10
前へ
/10ページ
次へ
   「お前は出入り禁止だそうだ。これはオーナーの決定らしいから、この界隈に近寄らない方が身の為だぞ」  真尋に向ける優しさの欠片もない声に、男の顔がみるみる青ざめていく。  「あんたまさか『リョウ』?」  「俺を知っているなら話は早い。金輪際ウミには近付くな。今回は警告だけにしておいてやる」  男が自分の名前を知っていた事の不快感よりも、無断でウミに触ろうとした事に対する怒りの方が大きいのだが、それを教えるほどリョウは親切ではない。  「分かったのならさっさと去れ。目障りだ」  リョウがそう言い終えるなり、男は逃げるように裏路地から走り去って行く。  それを見る事もなく、真尋が消えた店内へと足を踏み入れたのだった。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加