魚になった兄ちゃん

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魚になった兄ちゃん

水底の藻屑となりて兄(このかみ)は我を見つらし慎みて生く … Munchen 私の兄は級友と遊びもせず、自分の部屋で本ばかり読んでる少年でした。 しかし真面目少年という感じではなく、魚や宝石などの図鑑をただじっと見つめてる兄の姿をよく憶えてます。 仲の良い兄弟だったのでしょう。 兄と喧嘩をした記憶がありません。 兄には自己主張がないので喧嘩にならないのです。 私たちは田舎育ちで、よく裏山の奥の川原で遊びました。 夏休みに兄と二人で深緑につつまれた渓谷を探検したときのこと… 兄は、清流の中で宝石のように輝く魚たちを見つめながら、つぶやいたのです。 魚になれたらいいのにな… なぜかその兄の言葉は、私の記憶に深く刻まれました。 兄と川で遊んだ夏の日の思い出は、今も私の心の奥底で、あの魚たちのように輝いてます。 ただ過ぎ行くだけの幼き日の思い出。 一見無意味なことが人生に大きな意味を与えるものだと私は思います。 私は勉強が苦手だったので、夏休みの宿題などは兄にいつも助けてもらいました。     
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