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その人物は右手を挙げじっと前を見据えていた。
注目されている事を厭わない様に。
「おお。…えーっと、神谷か。神谷、やってくれるか」
先生もまだ生徒全員の顔と名前が一致してないらしく、座席表と照らし合わせて言う。
拍手、と促されてクラス全員が拍手する。
美鶴はその人物をまじまじと見つめていた。
少し長めの前髪に細フレームの眼鏡を掛けていて、ついこの間まで中学生だったとは思えない程の落ち着いた雰囲気を持っていた。
否が応でも目立つ事になるこの状況に自ら飛び込む気概と厄介事を自ら引き受ける自信。
美鶴には考えられないことだった。
…凄いなあ…
同い年なのに、思わず尊敬の念を抱いた。
凌は自ら立候補しただけあって、勉強も出来、クラスを率いるカリスマ性みたいな力を持っていた。
ただ常に淡々とした表情しか見掛けたことがない。
真面目で固いイメージが先行していた。
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